BMWの全生産台数の3分の1を占めるSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)のXシリーズ。
その第1弾となったX5は、BMW初のクロスオーバSUVとしてセダンの5シリーズをベースに開発、2000年に発売されています。
2007年には2代目へモデルチェンジ、3代目となる現行モデルは2013年にデビューしています。
メルセデスベンツGLEやポルシェ・カイエンなどの多くのフォロワーを生んだプレミアムSUVの先駆でもあり、いまやBMWに欠かせないモデルとなったX5の魅力とオススメグレードを御伝えします。
目次
BMW X5とはどんなクルマ?
クーペスタイルのX6を除けば、XシリーズのハイエンドモデルとなるX5。海外ではミッドレンジにクラス分けされますが、全長4910mm×全幅1940mm×全高1760mmとかなり大柄です。
特に1.9mを超える全幅は、多くの立体駐車場やマンションの機械式駐車場に入れないだけでなく、一般的な2.0m幅の路面の駐車場でも苦労するサイズで、最小回転半径は5.9mと小回りは効きません。
エクステリアは初代のコンセプトを受け継ぎ、FR(後輪駆動)ベースを感じさせる特徴的なロングノーズ、立ち気味のピラーやテールゲート、210mmの最低地上高など正統派SUVのスタイルです。
薄型のヘッドランプと横長のキドニーグリルが連続しワイド感と迫力のあるフロントマスク、サイドビューはシンプルですが張りのある面で構成されています。
ウィンドウエリアが大きく開放感のあるキャビンは、素材や質感にこだわったパーツが配されゴージャスな空間です。
インパネはセダンシリーズと共通のモチーフで、複数の面を重ね立体感を増すレイヤリングという手法でデザインされています。
モダンでエレガントな雰囲気にくわえて運転席に向いたセンタコンソール、小さめのメーターバイザーなどスポーティーさの演出も忘れてはいません。
リアシートの空間も十分で、シートバックは4:2:4で分割可倒式です。
オプションでコンフォートシートを選択すれば、6段階10度のリクライニング機構と80mmのスライド機構もプラスされます。
ラゲッジ容量は後席利用時で620L、最大で1870Lとなり、エマージェンシー用のサイズ(身長150mm以下を推奨)ですが2人掛け3列目シートも選択可能です。
充実した標準装備
標準装備も充実しています。
- HDDナビゲーションシステム
- iDriveコントローラー
- トップ+サイドビュー&リアカメラ
- パーキング・ディスタンス・コントロール
- オートマチックテールゲート(上下分割式ゲートの上部のみ)
多くの安全装備も標準
安全装備は、
- 「衝突回避・被害軽減ブレーキ」
- 「前車接近警告機能」
- 「レーン・ディパーチャー・ウォーニング」
- 「レーン・チェンジ・ウォーニング」
上記の他、前車追従式の「アクティブ・クルーズ・コントロール」も含めた「ドライビング・アシスト・プラス」が標準です。
駆動方式は、全車トルク可変型4WDシステム「xDrive」です。
前輪に40%、後輪に60%のトルク配分を基本に走行状況や路面に応じてトルク配分を行い、走る楽しみと走破性の高さを両立します。
センターデフには油圧クラッチではなく、電子制御モーターを使いトルク配分のレスポンスを向上したシステムです。
ドライビング・パフォーマンス・コントロールなど各種電子デバイスに支えられた走行性能は「駆け抜ける喜び」そのもの。
重心の高さや重さを感じさせないキレのあるハンドリング、巧みに制御されたロールで旋回性能はまさにオンザレール感覚です。
サスペンションはやや硬めですが、大柄なSUVにありがちな揺すられ感も少なく、フラットで快適な乗り心地になります。
ガソリン車とディーゼル車のどちらがオススメ?
X5だけでなく、BMWを選ぶときに一番悩ましいのがパワーユニットの選択です。
BMWはデザインライン以外ではパワーユニットによる装備差も少ないので、エンジンのチョイスには慎重にならざるを得ません。
デザインラインは標準モデルの他、クローム仕上げグリルやステンレスフィニッシャーなどでエレガンなイメージのxLIEと、エアロパーツ、アダプティブMサスペンションなどでスポーティーイメージを高めたM Sportがあります。
ガソリン車
ガソリンエンジンは3.0リッター直列6気筒ターボと、4.4リッターV8ターボの2種類になります。
グレード | パワーユニット | ミッション | 価格 | |
xDrive 35i | 3.0L直6DOHCターボ 225kW(306ps)/5,800rpm 400Nm(40.8kgm)/1,200-5,000rpm 燃費:10.3km/L | 8速AT | \8,790,000 | |
xLine | \9,240,000 | |||
M Sport | 8速スポーツAT | \9,400,000 | ||
xDrive 50i | 4.4L V8DOHCガソリンターボ 330kW(450ps)/5,500rpm 650Nm(66.3kgm)/2,000-4,500rpm 燃費:8.6km/L | 8速AT | \11,650,000 | |
xLine | 8速スポーツAT | \12,600,000 | ||
M Sport | \12,840,000 |
3.0リッターガソリンエンジンの魅力は、「シルキーシックス」と呼ばれるBMW伝統の直列6気筒エンジンの滑らかな回転と、胸のすくような高回転域でのパワーの伸びです。
精密なエンジンの回転、BMWならではのフィール感を十分堪能できます。
一方V8エンジンはトップユニットならではの動力性能を誇り、アクセルを踏み込めば2.2トンを超える重量級のボディをものともせず、軽々と加速しパワフルなドライブが可能です。
ガソリンエンジンのデメリット
ガソリンエンジンの最大のデメリットは燃費で、カタログデータでも直6は2桁ギリギリ、V8は1桁台です。
実走行での燃費はさらに悪くなる上、無鉛ハイオク仕様ですのでランニングコストはそれなりの覚悟が必要になります。
ディーゼル車
ディーゼルは先代の3.0リッター直6ディーゼルの燃焼効率を向上させ、パワーで13ps、トルクは2.0kgm強化されています。
グレード | パワーユニット | ミッション | 価格 | |
xDrive 35d | 3.0L直6DOHCディーゼルターボ 190kW(258ps)/4,000rpm 560Nm(57.1kgm)/1,500-3,000rpm 燃費:14.0km/L | 8速AT | \9,010,000 | |
SE | \8,780,000 | |||
xLine | \9,460,000 | |||
M Sport | 8速スポーツAT | \9,620,000 |
動力面だけでなく、静粛性も大幅に向上し車内や車外でもガラガラといったディーゼル特有の異音や振動は感じられません。
回転フィールもディーゼルとは思えないほどスムーズで、低回転から4.4リッターV8ガソリン並みのトルクを発生するため、走り出しから力強く加速します。
アクセルに対するレスポンスもガソリン車並みで、ストップ&ゴーの多い市街地でもストレスはなく、高速道路の追越しもあっという間です。
安価な軽油が使用できる上に燃費性能も優秀で、さらにクリーンディーゼルに対するエコカー減税額も増えます。
ディーゼルは燃料代を気にせず長距離ドライブを楽しめるのも強みです。
ディーゼルエンジンのデメリット
ディーゼルエンジンのデメリットは、パワーの伸び感でしょう。
3000回転でトルク、4000回転でパワーが頭打ちとなり、アクセルを踏み続けた時の盛り上がり感、伸びのある官能的なフィールはガソリンエンジンには及びません。
ディーゼルエンジンがオススメ
X5には、もう一つプラグインハイブリッドのパワーユニットがあります。
「xDrive40e」に搭載される2.0L直4ターボ+モーターで、トータル出力は313ps/450Nm、EVでの最高時速が120km/h、航続距離は31kmです。
ユニットの完成度は高いですが、プライスは949~1,011万円と高価で、EVのメリットを活用するには自宅での充電設備も必要になるため、購入できる人は限られます。
「BMWエンジンを思い切り回して楽しみたい」と思わなければ、ディーゼルエンジンがX5のベストチョイスです。
ディーゼルの35dはエントリーグレードでもありますが、装備やエンジンにチープ感は無く、全体的な性能バランスが取れています。
8速ATのマッチングも良く、100km/h巡行でもエンジンの回転は1500回転で、X5の大人なキャラクターに似合った性能です。
ガソリン車で検討している方も、一度はディーゼルに試乗して比較してみてください。
まとめ
X5はプレミアムクロスオーバーSUVに、セダンのハンドリング性能を初めて持ち込んだモデルです。
現行モデルでもその伝統は受け継がれ、SUVとは思えないコーナリング性能はBMWの技術力、クルマ作りの哲学を感じます。
5シリーズの予算より、プラスアルファが必要になりますが、スポーツサルーンとしてもレジャービークルとしても使えるX5はマルチな性能を持つユーティリティープレイヤーです。